触れると一瞬ビリッとするけれど、ダメージはなく安全
太い針金にトゲトゲがついた有刺鉄線(バラ線)柵はもう古い
今の時代、牧場風景も変わってきています。従来、牧場の柵といえば、太い針金にトゲトゲがついた有刺鉄線(バラ線)が一般的でしたが、近年は放牧地やパドックの周囲に、細いワイヤ―を2本ほど張り巡らせているだけのスマートな柵が増えています。
微量の電流が断続的に流れるパルス式が主流
これは電気牧柵で、その名の通り触れると軽い感電をすることで牛の脱走を防ぐものです。感電なんてこわい、と思う人もいるかもしれませんが心配は無用です。牧場用の電気牧柵はごく微量の電流が断続的に流れるパルス式が主流。静電気を強くした程度のものが一瞬ビリッとくるレベルですから、牛が触れてもけがをすることはありませんし、人間が誤って触っても影響はありません。電気牧柵はすっきりスマートで、ソーラー式もあります。
牛たちが学習し、逸脱しなくなる
“あそこに触るとビリッとして嫌だから、近づかないようにしよう”と牛たちが学習し、逸脱しなくなることが大目的です。牛は好奇心おう盛で、ちょっと興味がわくとすぐに脱走をしたり、牛どうしでふざけ合って柵の外へと押し出したりすることがありますから。
有刺鉄線よりも設置が簡単で断然長持ち
電気牧柵が重宝されるようになったのは、有刺鉄線よりも設置が簡単で断然長持ちするからです。有刺鉄線は支柱を立てるにしても線を張るにしても重労働で、しかも2~3年でサビが出て、知らないうちにどこかしら断線するというデメリットがありました。牛は観察力に優れているので小さな破れも見逃しません。“これ幸い”と脱走するので、牧場主やスタッフは有刺鉄線牧柵の管理や取り換えに労力を費やしてきました。
電気牧柵は軽く、その日の放牧エリアを替えることにも対応
一方、電気牧柵のワイヤーは防水性で劣化しにくい仕様ですから、長期的に見るとコストダウンが図れ、省力化もできるわけです。電気牧柵の設置は支柱をサクサクと刺していって、ワイヤーをスルスルと通していくだけ。1人でも簡単にできます。軽作業で済むので、食べさせたい牧草地に合わせてその日の放牧エリアを替えるということだってできます。
牛は利口ですから、電気牧柵を突破しようなどと無茶な行動は起こしません。
ですから、牧場スタッフも安心してしまい、通電させたりさせなかったりすることがあるようです。でももし牛が、“ビリッとしないこともある”と気づいてしまったら…。自由を求める勇者が現われるかも? とはいっても、牛は臆病でもあるので、そう遠くまで脱走はしないのですが。