~搾乳する場所の規模が大きければ、牛群も大所帯になるよ~
フリーストールやルーズバーン(フリーバーン)など、牛舎内で放し飼いをするスタイルの牧場では、牛さんたちは一定数に区切られた大部屋で寝起きをしています。この大部屋は「牛房」といい、大きな牧場であれば牛房もたくさんあります。
牛たちの部屋割りは頭数やメンバーなどがちゃんと決まっていて、各牛房とそのグループは「牛群」と呼ばれています。「牛群」とは牛のグループを意味したり、大部屋をさしたりと、両方の意味をもつようです。そして、牛さんがその日の気分で、好きな部屋に好きな仲間と入るという自由は残念ながらありません。
「牛群」の1つあたり頭数は、搾乳施設の規模により決まります。搾乳施設に1度に入室できる頭数を1つのグループにすると、牛たちはスムーズに移動ができ、作業効率が上がるからです。20頭くらいが平均的な規模ですが、より多頭の搾乳ができる搾乳施設ですと、50頭、60頭など大きな牛群になります。牛群が大きくなると、そのぶん牛房も広くなります。
続いて気になるのは部屋割りの方法です。「牛群」のメンバーはどのように決められているのでしょう。聞いてみると…。なんとメンバー分けの判断基準は牛の実績と能力でした。牧場主や牧場長が経営方針に沿って決めています。
基準のひとつに泌乳量で分ける方法があります。たくさん生乳を出すエリート集団、平均的な集団、乳量が少なく何か対策が必要な集団というように、泌乳量レベルが似かよった牛同士が同じ集団になるよう分ける牧場が多いようです。
また、泌乳期で分ける場合もあります。乳牛は出産してから3~4か月目までは生乳をたくさん出し、それ以降になると普通になり、次の出産が近くなるとあまり乳を出さなくなります。そのため泌乳期ごとにグループ分けをすると、おのずと泌乳量が同レベルの牛群ができるというわけです。
いずれにしても、同じ部屋にいる牛の泌乳量が同レベルであれば、必要な飼料成分や量もほぼ同じということ。まとめて同じ飼料を給餌できるので効率がよく、同じ目配りや対策も「牛群」全体に効果をもたらします。これが牛群管理のメリットです。
また任意で受ける「牛群検定」によって、牛個体ごとの乳質や受精能力、お産回数などを調べて潜在能力を分析し、その結果を「牛群」選定に反映することも推奨されています。有能な牛を選び出し、後継牛を優先して残していくための牛群分けを進め、経営安定に成功している牧場が増えてきています。
「牛群」が健康で、生乳を多く生産をすると牧場経営は向上します。牛さんたちが暮らす大部屋「牛群」は、牧場のいしずえなのです。