フリーストール牛舎やルーズバーン(フリーバーン)牛舎で飼養される乳牛たちは、「牛群」というグループに分けられ、同じ大部屋で共同生活をしています。文字どおり牛の群れですね。
牛は本来、集団生活をする動物ですから、群れでの暮らしは自然に近いといえそうですが…。しかし牧場の牛群は、生乳を生産するためにグループ化されたプロ乳牛集団。幼なじみを一緒にしてあげるとか、気の合いそうな牛同士を集めて同室にするという考えは、めったにないようです。
しかも集団生活をする動物は、仲間内で力関係をはかり序列をつくるといいます。だとしたら、気弱な牛さんは、威勢の良いお姐さん牛に圧倒されて肩身の狭い思いをしていない? 初めて出産を経験した新人お母さん牛は、新しい群れにうまく溶け込めるの?
あれこれ気になって酪農家さんに聞いてみました。
「答えは“あるある”ですよ。給餌の時に、気の弱い牛や若い牛が、ベテラン牛に追いやられるのはよくあること。それもまた動物の姿なのだと思う。かといってそのままにしておくと、おとなしい牛は満足に食べられなくて栄養が不足してしまう。だからうちでは配合飼料を給餌する時には、牛を個別に仕切ることができる設備「連動ストール」を使っているよ。これで食事の不平等は解決できるね」
そのようなお役立ち設備があったのですか。ほかに人間が行う配慮はありますか?
「給餌の時以外でも、若い牛がベテラン牛に牛舎の隅へと押されてしまうのはよくあることでね。これも“ワタシは強くてエライのよ”とか“ここはワタシの場所よ!あなたはあっちへお行き”と力や序列を示す、群生動物特有の行為だから仕方がない。だけど牛舎が満員状態だと追われた牛が柵にぶつかってけがをする心配があるし、立場の弱い牛が自分の居場所を作りにくいのもストレスになって良くない。
だから最初から定員頭数よりも2~3頭ほど減らして、ゆったりと牛群分けをしている牧場はあるね。もっと牛舎スペースに余裕がある牧場だと、立場の弱い牛だけを集めて一部屋作っているという話も聞くよ」
やはり大部屋の集団生活では、不自由をしがちな牛さんもいるようです。でも牧場主や牧場スタッフが目を配り、それを助ける働きや工夫をしていました。
やがて新米お母さん牛はたくましく成長していき、おとなしい牛さんも序列ランクをじわじわと上げていくそうです。女は強し!
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