牛さんにもそれぞれ名前がついている【名号(めいごう)】
ホルスタイン種はオランダやドイツが原産 だから名前は欧風にカタカナ表記です

~乳牛の名前はカタカナ表記。さて君の名は?だれが名付け親?~

あまり知られていませんが、牛にも名前が付けられています。乳用牛の仔牛が生まれると品種にかかわらず、その多くは日本ホルスタイン登録協会に血統登録され、一頭ごとに血統登録証明書が発行されます。人間でいえば戸籍原本のような大切なものです。
 
牛の名前は「名号」(めいごう)といい、乳牛の「名号」は3つないし4つの単語が連なる、32字以内のカタカナ表記と決まっています。そしてその「名号」は、母牛・父牛・母方祖母牛の血統名号を連ねるパターンもあれば、オリジナリティあふれるものまでじつにさまざまです。
 
オリジナル名号のうち、よくあるのは父母牛の名号から一単語ずつを取り、最後に仔牛独自の名前をつけ加える例。たとえば、「イースト ジヤパン アミー」という母牛と、「レッド クオリテイ ジャック」という父牛から生まれた仔牛に、「ハナコ」という名前を付けようとした場合、「ジヤパン クオリテイ ハナコ」とするなどです。
 
もしくは最初に牧場名やブランドを表す「オザワフアーム」などの冠名をつけ、2番目と3番目に父母牛の名前を入れる名付け方もあります。この冠名方式で付けるなら、「オザワフアーム ジヤパン クオリテイ」という案が考えられます。冠名は牧場名のほか、「シゲチヤンランド」など牧場主名にちなんだものから、「ヨークデール」など願いをこめたダジャレ風まであり笑顔を誘います。
いずれにしても、父母の名前は必須という原則が、血統を重んじる乳牛らしさを物語っていますね。
 
ところで、それら乳牛の名前はだれが命名していると思いますか?もちろん牧場主に優先的な権利があるのですが、なにしろ年間に何回も出産があるので毎度名前を考えるのは難儀なこと…。ほとんどの場合は所属する農業協同組合等へ「おまかせ」し、最終的に希望がなかった場合は日本ホルスタイン登録協会が、母牛・父牛・母方祖母牛の名号から取って付けているようです。
 
これは、かつて農協に勤務していた女性の思い出ばなし。
「時々上司に頼まれて牛の名前を考えていました。花壇の花が咲いたからスミレにしようとか、初雪が降ったからスノーホワイトがいいなとか…。観た映画の主人公からローズと付けたこともありました。楽しかったですよ」。
 
また、普段は「おまかせ」の牧場主も、特別な場合だけは仔牛のオリジナルネームを考えて決めています。
「うちは双子が生まれたら私が名前を付けているの。ルビーとサフアイアとか、キンサンとギンサンとか」。そう話すのは、ある酪農家の奥さん。
「修学旅行生が体験実習で来ていた時に仔牛が生まれてね。生徒がよく世話をしてくれたから、その子たちの名前をもらって、『タツヒロアンドユウト』って付けた。雌牛に男名前はちょっと変かもしれないけど、記念だからいいっしょ」という牧場主の談もありました。
 
しかしながら牧場現場で何十頭、場合によっては百頭以上もいる牛の本名を把握するなど至難です。実際には牛が耳につけている個体識別票の番号を呼び名とし、「320番、発情だよ」と知らせ合ったり、斑文の特徴から愛称をつけて「パンダ、おいで」と呼んだりしているケースが多いようです。
 

 

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