酪農家にとって乳牛は生命を持つ資産。病傷事故、死廃事故への備えは万全
【知らなかった】
牛さんも体調を崩したり、病気になったりすることがあります。
酪農家の奥さんが“よくあること”と前置きしながら、牛さんの急病顛末を話してくれました。
生きものだから、体調不良も当然ある
「昨夜1頭の牛がね、牛舎の中でボーッと立っているの。様子がいつもと違うから、体温計で計ってみると39度以上の熱。平熱よりも1度ほど高いから、夜遅かったけど、すぐに獣医師さんを呼んで診てもらったのよ。そうしたらやっぱり乳房炎。でも点滴を打って治療をしたからもう回復してきたよ。重症にならないで良かったわ。抗生物質が体から抜けるまで、生乳の出荷ができないのは痛いけどね」
乳房炎はお母さん牛が発症しやすい病気です。このように乳牛が病気やケガをした場合、最寄りの獣医師さんがすぐに来てくれるのは心強いですね。
ところで、人間の医療費は健康保険の適用内であれば3割負担で済みますが、乳牛はどうなのでしょうか?
「負担をするのは初診料だけだよ。うちは、すべての牛がNOSAI制度(農業共済制度)の家畜共済に加入しているから、だいたい無料で診療を受けられるね。診療費がかさんで限度額を超えてしまうと、年度末に追加支払いをしなくちゃいけないけどね」
NOSAI制度とは、各業種の農家が掛け金を出し合って共同準備財産をつくり、災害が起きた時に共済金を支払う制度です。全国各地に運営法人があり、共済掛金の一部は国が負担しています。そしてNOSAI制度の中の家畜共済とは、人間界の生命保険や損害保険、健康保険を、家畜用としてまとめた補償制度といえば分かりやすいでしょうか。
「うちは飼養頭数が約100頭だから、乳房炎になる牛はぽつりぽつりとでるの。季節の変わり目は風邪もひくし。NOSAIの獣医師さんが、休日や夜間も当番で待機していてくれるのは助かるわ」
家畜共済は乳牛1頭ごとに加入するそうですね。掛け金はどのくらいなのでしょうか?
「家畜共済も人間用の生命保険や損害保険と同じで、補償割合を大きくすると共済掛金も高額になるわけ。うちのばあい1頭の負担掛金は年間3万円弱くらいかな。全頭分にしたら300万円近くにもなる。たしかに大きな金額だけど、この制度には助けられているよ」
牛さんだって病気もすればケガもするし、寿命もきます。だから、いつでも獣医師さんが駆けつけて来てくれて、補償も受けられる支えはかけがえのないもの。日本には、農家のための頼もしいサポートがありました。