冬は牛さんも風邪を引きやすい。予防のために酪農家はどんな工夫を?|酪農のはなし

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「食欲がない牛や元気のない牛がいたら、丁寧に観察をして見守る。フリーストール牛舎でブホッなんて咳が聞こえたら、今の誰?咳したの誰?って真剣に探し出すよ」

【知らなかった】

冬の心配といえば、風邪やインフルエンザですね。寒さで抵抗力が落ちたり、乾燥でウイルスが浮遊したりして風邪などのウイルス疾患に罹りやすくなります。そして冬に風邪引きさんが増えるのは人間だけではありません。牛も風邪を引くそうです。酪農家さんに聞いてみました。

「牛も人間と同じ。風邪を引いたら鼻水をたらすし、ゴホッって咳もする。ひどくなると熱も出るよ。なんだかボーッとしている牛がいるよ、これは怪しいねって言って体温を計ったら案の定40度以上の熱で、獣医師さんを呼んで注射をしてもらおうか、どうしようかと思案することが冬にはあるね」

乳牛の平均体温は38.5度くらいといいますから、40度はひどい高熱ではないものの悪化したり長引いたりすると困りますね。それに乳牛は牛舎で集団生活をしていますから、1頭が風邪を引いたら同じ部屋の牛に感染してしまう心配はありませんか?
 

「あるよ!それが一番厄介だから対応に手を抜かない。牛群に風邪がまん延してしまう前に、風邪の牛をすばやく隔離するとかね。大勢の牛に感染して治療をすることにでもなれば、もう大打撃だよ。抗生物質が抜けるまで生乳の出荷はできないから」

冬、牛たちが風邪を引かないように、気をつけていることはありますか?

「抵抗力が落ちないように飼料をしっかり食べさせたり、こまめに換気をして牛舎内の空気をきれいにしたり。牧場によっては、冬でも屋外に出して抵抗力をつける考えのところもあるね。あとは、食欲がない牛や元気のない牛がいたら、丁寧に観察をして見守ることかな。フリーストール牛舎でブホッなんて咳が聞こえたら、今の誰? 咳したの誰? って真剣に探し出すよ」

経産牛の風邪も心配ですが、特に風邪を引きやすいため対策が必要なのは仔牛だと聞きました。

「そのとおり。特に生後1カ月を過ぎたら心配だね。仔牛は誕生直後に母牛から免疫グロブリンたっぷりの初乳を飲ませてもらうから、生まれてからしばらくは病気にかかりにくい。でもその抗体は生後1カ月ころから減り始め、3カ月ころには消失するので、気をつけてあげないといけない。仔牛は体力がないから風邪から肺炎を起こしやすいし、死亡してしまうこともあるからね」

冬、仔牛にはどんなケアをしてあげていますか?

「きれいな敷料をいれて清潔を保ったり、体が冷えないように保温に気をつけたりしているよ。仔牛にカーフジャケットという布の洋服を着せてあげたり、仔牛用の部屋に暖房ヒーターを設置したりする牧場もあるみたい。あとは風邪に対応するワクチン接種」

牛にも予防接種があるのですか?

「家畜用予防ワクチンの種類は多数あるよ。獣医師さんが、地域や目的やその牛に適した混合ワクチンを選んでくれるのが一般的。負担費用はだいたい1頭につき2000円くらいかな。ワクチン接種したら、今年は仔牛が風邪を引かなかったって言う酪農家の声をよく聞くよ」

牧場ごと、大事な牛の健康を守るために工夫をしていることが分かりました。牛さんたち、この冬も風邪を引かないよう、元気に過ごしてくださいね。