2:何のため?計算方法いろいろの自給率情報開示

日本の食料自給率情報開示には複数の計算式があります。これが「さすが日本の公務員」とうなりたくなるほど緻密で複雑。「統計とはそういうもの」というのも一理あるでしょうが、こんなに複雑だったらみんな興味を持ってくれないんじゃないのかしら?本当に必要なことを把握することだけでもやってみよう!そう斬り込んでみた筆者ですら、やや曖昧なところもあり難しい。もし筆者の間違いに気付いた方がいらしたら、ぜひ教えていただければありがたいです。

●日本の自給率がいきなりややこしい理由。それはカロリーベースと生産額ベースの共存

世界との比較のページで「自給率は38%」と紹介したのは「カロリーベース総合食料自給率」(以下カロリーベースと省略)といわれ、栄養価を基準に算出しています。
食品には、芯や皮などを除き可食部だけになった食材がどのくらいの栄養価を持つかについて基準値があります。それが「日本食品標準成分表2015(七訂)」というもので、文科省の管轄で定められ、5年おきに更新されています。これがカロリーベースの計算根拠となっており、加工食品の包装容器に書かれている栄養価にも使われている場合があります。
大人が一日あたりに必要とする熱量(カロリー)のうち、国産品によるカロリーがどのくらいを占めているか、という考え方で算出しています。

●カロリーベースとは別に「生産額ベース総合食料自給率」があります。

「食糧需給表」に記載されている日本で収穫された農産物の重量を「農業物価統計」の「農家庭先価格」で換算するもの。これは収穫物が計算基準になっているようなので、文字通り「自給率」といえなくもなく、これで計算すると日本の食料自給率は65%あるそうです。筆者は昨年「この計算でいいのに、なぜわざわざ38%という数値を出すんですか?国が危機をあおってますよね」と友人に言われ、返す言葉がありませんでした。ですが、日本で主に作られる米や小麦などの穀物や、いも類、野菜だけでは、仮に自給率が100%になったところで健康な暮らしを営むには足りない食品が出てくることになります。割合の数値だけでは正解にならない落とし穴を見つけた気分です。

●飼料自給率も加わって、さらに複雑な全体像

人間が一日に必要とされる栄養価には、食肉やその生産物となる乳製品、卵が必要です。牛肉をはじめ、豚肉や鶏肉などは私たちの食卓に毎日のように当たり前に並んでいますが、ここで紹介しているように飼育に使われている飼料(餌)は大半が輸入です。つまり「外国の飼料があって育っている食肉類なんだから自給しているとはいえないでしょ」として、この計算にあまり含まれていません。この「あまり含まれていない」のがポイントで、実は畜産物の計算においては「飼料となる穀物などをどのくらい自給できているか」といった「飼料自給率」の指標に照らし合わせて換算されたものが使われています。

つまり日本で蓄養されている食肉鶏卵は、日本の農家さんが汗水たらして取り組んでいることであるにもかかわらず、まずは餌に使う農産物の輸入比率を計算しないと、どのくらい自給されているかの全体像すら把握できないというわけです。これって誰のため?

●さらなる指標「食料自給力」も誕生したと!?

こうして、統計や標準値、金額や比率などの数値をあてはめることで、どんどんカドが削られ丸くなっていった数値で算出されたのが、現在知りうる「日本の食料自給率」ですが、これに加えて2015年(平成27年)から「“食料自給力”を指標化」することを日本では始めたそうです。
あーもう指標だけでお腹いっぱい!
2014年(平成26年)2月の特別世論調査で「将来の食料供給に不安がある」と答えた人が83%いるそうです。さらにそのうちの8割が「国内生産による食糧供給能力が低下するおそれがある」と回答したために始まった取り組みのようです。しかしこの回答文だけでは「生産力」と「供給力」どちらの低下をおそれているのか曖昧に読めますし、私がこの調査の回答者だったならば答えに困りそうですが。

国民一人一人が自給率アップにむけてできることを探したいだけなのに。
これで何かに取り組んだところで、この指標で結果検証ができるのか不安です。また、この計算を毎年行う国の労働力に国民の税金が充てられているということを忘れたくありません。

食は人の体をつくる基本です。どこに視点を持って行けば、生産者の活動に活かされ、それが消費者に還元されるのか。牛さんにならって、いろいろ“咀嚼”していきたいと思っています。

Written by. iijima

【参考】
農林水産省 食料自給率・食料自給力について

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