NHK連続テレビ小説「なつぞら」100作目は、主人公の柴田家が牧場を営んでおり、北海道の酪農家さんたちも親近感をもって見ているようです。牛が登場するシーンでは、私たち一般の視聴者が気づかないことでも、酪農家さんなら“おや?”と気づくことはあるようで…。
「牛に角(つの)がないよね」
昭和20~30年代はどこの牧場の乳牛にも角があった
ドラマの時代設定である昭和20~30年代はどこの牧場の乳牛にも角があったはずなのに、出演している乳牛には「角がない」と。プロ酪農家さんが時代背景との食い違いをめざとく発見して、ニンマリしているわけです。
あまり知られてはいませんが、牛は雄でも雌でも生後3カ月くらいから角がはえてきます。でも角があると牛同士はもちろん、牧場の人も作業時に接触してけがをするおそれがあるため、昭和40年頃から乳牛の角を切り落とす「除角(じょかく)」を行うようになったそうです。
ドラマに出演している牛たちは、今現在、北海道十勝で飼養されている乳牛たちですから、当然、除角されているわけです。
主人公が初めて牛舎へ入った朝、「近寄ると蹴られるぞ」と叱られていました。
牛と仲良くなってしまえば、牛の後方へ近づいても蹴られることはそうありませんが、角だけは要注意だったようです。牛は人間にじゃれようとして顔を近づけてきますし、ハエなどの虫を払おうとして突然首を振ることもありますから。
変わってきたのは角だけでなく
昭和40年ころから多頭飼養が進んでいくと、やはり角は危ないということになり、角が小さなうちに専用ニッパーで切る除角が定着していきました。今は薬品を塗る除角方法もあるようです。牛にとっては一瞬痛い体験ですが、一度除角をしてしまえば、その後、角ははえてきません。
さて、時代とともに変わった牛の姿は、角のあるなしだけでしょうか。現在のホルスタイン種は、泌乳量を高めようと長年にわたり改良されてきた高性能の進化系。60~70年前と今では、体格や体型がかなり変化していそうです。