日本の食料自給率は栄養価の計算や畜産飼料の自給率が換算されているうえに、飼料の中心となるトウモロコシは輸入に頼っており、主食の米ですら生産農家減少と輸入義務米が存在していることを知りました。日本の「食」が置かれた現状は、なかなか複雑です。今回は「自給率」という数値からのアプローチではなく、食べることを入り口にして「食料自給」を考えてみます。
 

●飼料自給率アップは目標に届かないまま、世界はさらに変わっていく

農林水産省の「飼料自給力・自給率の向上に向けた取組」では、2015年までに飼料自給率を35%に引き上げる目標を立てていたようですが、2017年の時点でわずか26%までしか上がっていません。また、輸入飼料穀物を国内生産で賄おうとすると、日本国内の耕地面積の92%を使わねばならないとの試算もあるそうです。驚きです。これでは、ド素人の私ですらこのままでは将来大変なことになると想像できます。
よく耳にする専門学者の話のなかに「日本は土地も資源もない国なのだから、輸入に頼るしかない」というものがあります。でも輸入にはリスクがあり、日本では安全性が確認されていないのに、外国のルールでOKとされた農産物を口にする可能性があるのです。そして世界を見渡せば、“映える”食事どころか「生きるための食料」が足りていない地域もあります。供給よりも需要が明らかに上回ったとき、農産物を作る土地も技術もある日本が、他国をおしのけて食料を調達できるのか。懸念されるのは量だけではなく、もし価格が100倍に跳ね上がっても買える用意があるのか。「中国の10億人が本気で豊かな食生活を楽しみ出したら、あと数年のうちに日本には入ってこなくなる食材はたくさんある」と心配している飲食店や料理人も少なくありません。手をこまねいて眺めているしかないのでしょうか。
 
 

●国が「飼料自給率アップ」の流れで唐突に推奨する「放牧」

飼料自給率を解説する農林水産省のサイトでは「放牧は飼料費の節減だけでなく、飼養管理や飼料生産作業の省力化、牛の健康増進による衛生費の削減、繁殖成績の向上といった効果により酪農畜産経営の収益性を高めることが期待できる。」と締めくくられています。意訳すれば「飼料を作るには人手やお金がかかるけど、あいている土地に牛を放しておけば勝手に草を食べてくれるから手間もかからず、牛の運動にもなる。牛の健康にいいと酪農家の収益もあがるだろうからいい話でしょ?」ということのようです。
放牧は悪い話ではありませんが、問題は「そんなに都合よくいくの?」です。全国の酪農家の隣接地が「牧草地になりうるところ」とは限らないし、近隣県でも牛に電車で移動してもらうわけにもいきません。生えている草なら何でもいいの?とか、酪農家じゃなくても牧草地は管理できるの?とか、疑問は膨らみます。仮に耕作放棄地が都合よく放牧地に使えたとしても、そこに住む人はどうするのでしょうか?(また補助金?)
そもそも牛乳・乳製品の自給率は60%ですが、飼料自給率を換算すると26%です(2017年度最新)。忖度が生まれたのか「牛乳は国産」と呼ばなくなりましたが、日本で飲める牛乳は日本の酪農家が搾った100%国産なのです。言わなくてもみんなわかるでしょ、という時期を過ぎると、誰も知らないことになりかねません。「わざわざ言うなんて逆におかしい」と邪推されれば、話はもっと面倒です。放牧という具体的な施策をプロの現場に提示するより、まずは自給率の実態の見えにくさを解決すること。そしてどのように国民一人一人の努力につなげていくのかを示すことこそが国の仕事ではないでしょうか。
 
 

●畑作に重要なのが「土」。酪農と農業には小さな接点があります

ここの土は火山灰だからとか、海の近くだから塩分が含まれているとか、農作物と土の関係について耳にしたことはありませんか。作物の善し悪しに土は大きく関係しています。有機栽培や無農薬も収穫物の話だと思いがちですが、実は土の話であり、太陽にあてたり、寒い時期に冷気にさらして休ませたりと、作物を育てていない時の土づくりが次の収穫につながるのです。その「土づくり」にプラスになるのが堆肥。堆肥とは牛ふんや鶏ふんを落ち葉や残さと一緒に発酵させたもので、牛ふんは主にやわらかい土づくりと草木部分の栄養のために、鶏ふんは実を付けるための栄養に一役かいます。
稲わらや牧草、米などが餌になり、食べた家畜が消化して排泄したふんの成分が土を豊かにする。それが草木や実を育て、、と、小さな循環が成立します。酪農・農業従事者はみんな知っているようなことですが、資源を循環させ効率のよい仕組みを作るのはこれからの地球にとって大切なことです。そして実は牧草地も「土」なのです。海外の土壌分析の専門家の知恵を借りて、施肥や追肥を行い牧草地を整えるところから努力している酪農家も増えてきています。それは牧草という「牛の食餌」が牛の健康や乳量に役立つからで、技術の進歩は科学的です。イネ科とマメ科の草が生えている場所にベテランの経験と勘で牛を放しておけばいい、そんな簡単な話で済む時代ではもはやないのです。
また、後継者のいない農地を借り上げて就農希望者へレンタルしたり、その収穫物を飲食店へ卸すサービスを行っている民間企業が出てきています。集めた税金を補助金に使うだけの施策ではなく、これからは知恵を出すことが重要ではないでしょうか。
 
 

●消費者が買うことが一番の支援になり、それが将来に向けた食の安定につながるのでは

畑作は広い土地ほど機械や人員が必要ですし、酪農は牛を飼養する土地や日々の飼料が必要で、そこには大きなコストがかかり経営を成り立たせる視点が必要です。第一次産業が回っていくためのコストは、消費者による購買という形で回収できるのが理想です。飼料を外国から輸入するという“大きな経済”とは違うかもしれませんが、このようなお金の循環も大切ではないでしょうか。人が集まれば産業は活気づき、工夫も生まれます。参加者が増え競争が生まれれば、さらに新しい活路を見いだすこともできるのではないでしょうか。
酪農を通じては、堆肥だけでなく有機物をメタンガスに替えるバイオマスエネルギーなどを開発している国内企業もあります。しかし循環した生成物を遠距離に運ぶにはその手段やコストが問われてしまい、地域の枠を越えた効率化を図らなければ事業として採算をとるのは難しいようです。
それを解決する知恵も資金も私にはありませんが、“協業”の可能性を見出すためには、心ある企業に最低限のお金が回ることが重要です。今はどこの企業もホームページの一つや二つは持っています。消費者はなるべく企業ポリシーを見極めたうえで商品を選び、そして買うことで企業を支援する。それがめぐりめぐって食料自給率の向上に響いてゆくことも期待できるのではないでしょうか。
 
 
【参考】▼トーヨーエネルギーファーム
http://toyo-group.com/enefarm/service/energy/biogas.html
 
 
litten by iijima
 
 

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