初妊牛(しょにんぎゅう)|おなかに仔牛がいる、初分娩よていの牛

「初妊牛(しょにんぎゅう)|おなかに仔牛がいる、初分娩よていの牛」のアイキャッチ画像

もうすぐお母さん。初めての出産がうまくいくよう大切に見守られる

未経産牛(みけいさんぎゅう)の中の、初妊牛(しょにんぎゅう)

まだ仔牛を産む前で搾乳牛となっていない若い雌牛は、広くひとくくりに「未経産牛(みけいさんぎゅう)」と呼ばれていますが、その中でも妊娠していて出産を待つ状態の牛は「初妊牛」と呼ばれます。

2歳くらいで初の妊娠をする

乳用牛は生後14カ月くらいから受精(種付け)をし、受胎が成功して初めて分娩できる年齢は最短で2歳。ですから初妊牛はだいたい2歳の若牛です。人間と同様に、10カ月間の妊娠期間を経て仔牛を産みます。産んだ後は晴れて搾乳デビュー。生乳を出して牧場や市場に貢献してくれます。写真は、公共育成牧場の初妊牛。出産予定の1~2カ月前には自分の牧場へ帰ってお母さん牛になります。

それまでずっと牧場内の育成牛舎で飼育されてきた初妊牛は、出産予定日の2週間くらい前に搾乳牛舎に引っ越しをすることが多いようです。早めに搾乳牛舎に慣れてもらうためと、搾乳牛舎がもっとも目が届きやすいという理由にあるようです。
一方、生後数カ月から外部の育成牧場に預けられ、そこで受胎した初妊牛は、だいたい出産予定日の1カ月半か2カ月前くらいに里帰りをしています。

細心の注意を払い牛を見守ります

いずれも妊娠による体の変化は初体験なうえ、牛舎を引っ越すなど環境の変化もあります。そうした変化に戸惑ってしまう牛もいますから、どの牧場も初妊牛には特に注意を払っています。
例えば、滑って転ばないよう牛床(ぎゅうしょう)にマットを敷いたり、足に痛みを感じないよう清潔な敷きワラをたっぷりと敷いたり。ストレスや事故などなく快適に過ごせるよう配慮をしています。牧場によっては、他の牛と接触せず安全に出産できるよう、個室の分娩房を設けているところもあります。

いざ初分娩という時にスムーズにいかなかったり難産になったりしてしまうと、その牛は2回目以降の出産時に思い出してしまうのか、分娩に前向きになれずまた難産になってしまうことが多いとか。ですから初妊牛のお産は、牧場にとって気を遣う大一番だといいます。

仔牛から育成牛に育ち、そして初妊牛となっていよいよ搾乳牛。人間でいえば社会人です。2年近くに及ぶ育成の道のりを知る牧場スタッフには感慨深いものがあるでしょう。