生乳100%の牛乳は、さまざまな乳製品に形を変えるため、乳の成分のうち必要なところだけをピンポイントで活用することも可能なのです。この仕組み、一度理解すればとってもカンタン!
今回は牛乳からクリームとヨーグルトを比較解説します。
乳製品はすべて牛乳(生乳)が原料です
牛乳の成分はおもに「水分」、良質なアミノ酸に変わる「たんぱく質」、「脂質」、整腸作用に必要な「炭水化物(糖)」、「ビタミン・ミネラル」です。
水分と脂質が分離せずに混じりあった状態で、手軽に摂れます。しかも栄養素密度が高いため使わないのはソンです。そして牛乳の栄養的メリットをもらさず活用するために、成分や特徴に特化し保存しやすくさせたものが乳製品です。
牛乳を乾燥させたもの:粉乳・スキムミルク
乾物と同じく常温で保存でき、消費期限も長い
牛乳は開封してから1週間程度で飲み切らねばなあず、1本飲み切れないから、と買うのを躊躇する人がいます。
でも牛乳から水分を抜いた「スキムミルク」は、かつて脱脂粉乳とも呼ばれ、スーパーで買えます。乾燥品(ドライ)のため水溶成分が牛乳よりも減りますが、たんぱく質は多く残存しています。他の食品に添加されている「ミルクプロテイン」はこの粉乳をさす場合がほとんどです。ちなみに「育児用の粉ミルク」とは成分が異なり別モノです。
活用方法
「粉乳」というと、水に溶かして飲むことを考えがちですが、それなら牛乳のままでいいのです。ここは粉体の特長を活かしましょう。料理にほんのりした甘みと味わいがプラスされ、たんぱく質を多く摂りたい人には特に有効です。
- ホームベーカリ等で焼くパンや、お好み焼き、たこ焼き、ナン生地に混ぜる
- パン粉や、てんぷら粉など、揚げ物の衣に混ぜる
- 餃子や、シュウマイ、ハンバーグなどひき肉料理のタネに混ぜる
粉乳は乾物と同じで品質管理がしやすいため、皆さんがよく食べるヨーグルトの製造に添加しているメーカーもあります。
牛乳を濃縮ペースト状にしたもの:(生)クリーム
食材を水っぽくせず、味わいを濃厚に
クリームとは牛乳の乳脂肪を集めて濃厚にしたものです。乳脂肪によって舌触りのなめらかさとコクがありますが、何も加えなくても空気を混ぜ込むことで液体から個体へとかたさを調整できる、珍しい食品です。
わざわざカロリーを多く摂りたい人はいないと思われがちですが、闘病などで体力を落とした人や、一度にたくさん食べられない人、食が細いお年寄りに有効です。クリームでも牛乳の半量はカルシウムがとれます。
また泡立てなければ濃度があるので、調味料をのばすのに牛乳よりも向いています。
活用方法
- ペースト状のもの(味噌、マヨネーズ、ケチャップ、マスタード、練りごま、わさびなど)と混ぜ、味をマイルドにしたり、コクを出したり、ゆるくのばしたり
- 食材に混ぜてペースト状に(つぶしたゆで卵、マッシュじゃがいも、かぼちゃ、小豆、酒かすなど)
- 脂肪球が匂いを吸着するので、胡椒、カレー粉、ハーブなどあえて香りを立たせたいディップ等に
- バルサミコ酢、オイスターソース、スイートチリソースなど酸味やうまみの個性が強いものと合わせマイルドなソース等に
均質化していない「ノンホモ牛乳」の上にたまるのも同じクリームです。カフェオレは牛乳で作るよりもリッチな味わいに。濃い目のインスタントコーヒーを黒糖などで甘く作りゼラチンで冷やしかため、スプーンでクラッシュしながらクリームと一緒にグラスに注げば、素敵なおもてなしのおやつになりますよ!
植物性油脂などが混ざっていないか
なかには植物性の油脂が混ざっている製品もありますが、ほんらいクリームと呼べるのは乳脂肪100%のみです。「生クリーム」という呼称は、その昔冷蔵品だという認識を深めるためになんとなくつけられたようで、「クリーム」と「生クリーム」が2つ存在するわけではありません。
牛乳を半固形にしたもの:プレーンヨーグルト
さわやかな口当たりで、水分調節もできる
プレーンヨーグルトとは、乳酸菌やビフィズス菌などで発酵させることで、乳たんぱくを消化しやすいやわらかいカードに変質させたものです。幼児や高齢者の栄養補給にも優れています。
乳たんぱくは「カゼイン」と「ホエイ」に分かれ、ヨーグルトを揺らした時に出る上澄みや水切りしたときに出る水分は、ホエイというたんぱく質です。ホエイの成分は生物価が高く、たんぱく質の中でも腎の排泄に負担がかかりにくいと言われていますが、貴重な栄養源なので食べるようにしましょう。
また水切りしたヨーグルトは水分が抜け、かたさを増すので、上に紹介したようなクリームの替わりとして調味料に混ぜたりできます。
活用方法
- 味噌、マヨネーズ、ケチャップ、塩麹、カレー粉などと混ぜて味変に
- ペースト状のものと混ぜテクスチャをゆるくして肉や魚のソースに
- 酢と油を混ぜて乳化したサラダドレッシング等に混ぜて、コクを追加
- ぬか床などに足す水分の替わりに
- 切り干し大根などの乾物に混ぜ、水不要で戻せます(独特の臭みも消えます)
1食個分けのカップ入りヨーグルトは
特定の菌に特化した品名などが付くカップ入りヨーグルトは、甘みを足してある場合が多く、ここでいうプレーンヨーグルトとは成分が違う場合が多いです。水切りなどもうまくいかないですし、食べ残した分を料理に使おうと思ってもちょっと勝手が違うでしょう。また、飲むヨーグルトも甘味が添加されている場合が多いので調理に足すにはひと工夫が必要です。
乳酸菌飲料(ヤクルト等)は「乳製品の成分規格等に関する命令」で定められていますが、そもそも乳製品ではありませんので、乳の持つ栄養素は摂れません。
漬け床などに使った場合は
食材を柔らかくしたり臭みを消すのに使った場合は、そのヨーグルトをどうするか迷う方も多いでしょう。冷蔵庫などで行えば食べられないことはありませんが、せっかく吸着して分けた臭みを結局食べることになると、手間をかけた意味が薄らいでしまいます。もったいないかもしれませんが「食べずに処分」をおすすめします。
参考リンク:
参考資料:【乳たんぱく編】【乳脂肪編】ともに
ミルクのサイエンス(社団法人全国農協乳業プラント協会)
牛乳がわかる50問(社団法人日本酪農乳業協会)
別冊medicalASAHI 牛乳の成分とその機能を知る(一般社団法人Jミルク)
乳と乳製品のQ&A/国産バター・生クリームハンドブック(一般社団法人日本乳業協会)