ハイジになりたくて酪農家に嫁いだ友美さんの大切な日々と、いま思うこと。

“牛乳のでたらめな記事を信じないでください”
そう題したブログが発信されたのは、2016年10月21日のこと。声を上げたのは熊本県菊池市の酪農家女性でした。
 
それは、あるSNSに牛乳を誤解した情報が綴られたことに始まります。「日本の乳牛は成長ホルモンを投与されている。だから牛乳は危険」だとする意見が現れ、それを信じた主婦たちを介してどんどんと広がっていったのです。「からだによいと思っていたのに、牛乳に裏切られた」「今日から子どもに牛乳を飲ませません」。そんな言葉が飛び交う中…。
酪農現場から発せられた言葉は実直で、読む者の心をうちました。日本では厳しい法令と基準を満たした乳しか出荷できない。その事実を切々と訴えて、混乱する人々を安心させた人。
 

日本の牛乳ほど“安心・安全・おいしい”牛乳はありません!!私は誇りに思って毎日搾乳しています。 日本の酪農家さんが愛情こめて生産した牛乳です。安心して飲んでくださいね

 
ブログの最後をそう締めくくった酪農家女性は、どんな人なのだろう。どんな牧場でどのように牛たちと暮らしているのか…。会いたくて、熊本県のまつおか牧場へと向かいました。
迎えてくれた松岡友美(ともみ)さん(44歳)は、明るい笑顔が印象的。
友美さんのブログ記事は大きな反響を呼び、一時は一日のアクセス数が4万を超えるほど。シェア数も1週間で2万まで増え、日本中を駆け巡りました。
 

動物好きの友美さんが育てる牛たちは、みんな素直でおだやか

せめて自分の友人にだけは本当のことを伝えたい。その一心でブログに書こうとしたのですが、当然、自分の知らない人も読んでくださるでしょう。そう思うと、酪農家としてそれこそ誤解を生まないよう正しく伝えなければと緊張しました。だから夫に相談しながら書いたんです。それが大きな反響となって驚きました

 
あのころ友美さんを励ましたのは、全国から多数寄せられたメッセージやコメントです。
 
「酪農現場の人の声を聞いて安心しました。さっそく家族に飲ませます」
「牛乳が好きだったのに、間違った情報にまどわされて買えずにいました。これで安心して飲めます」
「牛乳、やっぱりおいしい」
こうした言葉の数々に、友美さんの涙が止まりません。「悲しかね、悔しかね」と嘆いた始まりから一転、うれしいエンディングとなりました。
 
まつおか牧場は牛を大切にする牧場です。夫の憲一さん(52歳)は2代目牧場主。一頭一頭に目をくばり、「この牛さん、こぎゃん食べとらん。大丈夫だろうか」など、つねに牛を気遣っています。飼養頭数は、搾乳牛48頭を含む90頭。手入れがゆき届いた繋ぎ牛舎で、のんびりとする牛たち。見知らぬ訪問者に会っても、恐がって脚をばたつかせることもありません。このおだやかさが、まつおか牧場の気風なのでしょう。
 

よく手入れが行き届いた、清潔な繋ぎ牛舎

うちには3人の娘がいますが、学校の大切な行事にちゃんと行けたためしがありません。90頭の牛さんがいると、だれかしら風邪をひいたり下痢をしたりします。牛は繊細な動物ですから。お産が始まる場合もありますしね。そうなれば牛の看病や観察を優先しますよ。だから入学式や運動会、部活動の試合応援…。いつも間に合わず、子どもたちには寂しい思いもさせました

 
そう振り返る友美さんの目が潤みます。
 

だからこそ、日常ではなるべく家族が一緒に過ごせるような家庭を心がけました。空き時間にパンやケーキを作っておいて…。はい、もちろん牛乳たっぷりの。子どもたちは学校からまっすぐ牛舎に『ただいま』って帰ってきますから、牛舎でおやつを食べて宿題をやって、学校であったことをあれこれ話して。お手伝いも牛さんのお世話。わが家は牛舎が団らんの場なんです。(笑)忙しいなりにも家族が密でいられる、私流の子育をしてきました

 
間違って信じられていた情報の中には、「雄牛が生まれたら、すぐに人間の手で死なせる」というものもありました。
「たしかに雄の仔牛は2カ月くらいで肥育牧場へ送られ、いずれは食肉となる運命かもしれません。だからこそ、うちの牧場にいる間は精一杯の愛情をこめて育ててあげたいんです」。そう言って、笑顔で仔牛の世話をする友美さんです。
 

友美さんを見て走り寄ってきた
生後2週間の仔牛

飼料用稲や牧草のサイレージ。トウモロコシのサイレージ、稲わら乾草など…。まつおか牧場では多彩な祖飼料を作っており、そうした仕事も憲一さんと友美さんの二人三脚。友美さんがダンプカーやトラクターに乗って作業することもあります。
 
また友美さんは仔牛の世話を担っているほか、毎月提示される牛群検定成績表をもとに、牛たちのデータ管理も行っています。友美さんが嫁いで来るまでは手が回らずにいたデータ管理ですが、今は友美さんが牛ごとの乳量や乳質、分娩頻度などさまざまなデータに目を配って、気になる牛や傾向が見つかれば、すぐに対策を講じます。その一環で、配合飼料の検討も重ねました。飼料会社の担当者とともに牛の観察やデータ考察を繰り返し、まつおか牧場に合う飼料を見つけたのです。それ以来、牛たちはより健康になりました。
 
友美さんは熊本市出身。熊本県酪農業協同組合連合会に勤務していた時に、熊本県乳牛共進会の常連で県代表になるなど、情熱を持って牛を飼養する憲一さんと知り合います。
 

私は牛乳と動物が大好きで、ハイジにあこがれて牧場に嫁いだんです。23歳の時でした。ところが夢と現実は大違い。(笑)それまではネイルや流行りのおしゃれをして街を歩いていたのに、長靴と作業つなぎの毎日ですよ。しかも大家族同居。一時は4世代10人家族の食事作りに追われました。忙しさと世の中から隔絶された閉そく感で、よく滅入っていましたね

 
そんな折に出合い、友美さんを元気にしたのが「カラーセラピー(色彩療法)」です。
 

カラーセラピーを受けて、自分の心や役割を見つめることができました。今はカラーセラピストとトレーナーの資格を得て、昼間の空き時間に『牧場カラーセラピー』を行っています。うちの牛さんやヤギさんに触れて安らいでもらい、それからセッションをします。癒やしの牧場があってもよいかなと思って…

 
中高生の農業実習生が来た時は、一緒にチーズを作りピザを焼くなど楽しく農と食を伝えながら、人にも動物にも大らかな愛情をそそぐ友美さん。
かの注目ブログを生んだ酪農家女性の素顔は、ハイジのようでした。
 
 

お話を伺いました
【熊本県菊池市】まつおか牧場 飼養頭数/90頭

お互いを信頼している空気が、松岡夫妻から伝わってきます

 

※撮影や取材は牧場の許可を得て行っています。
感染や事故予防のため、無許可で牧場敷地内へ立ち入ることはご遠慮ください。

 

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