調理法によって味や栄養はバラエティ。だから食べ飽きしません
牛さんも、食べることが身体づくりの基本
酪農家さんに、「牛さんの健康と、よい生乳のために大切にしていることは何ですか?」とたずねると、「粗飼料だね」という答えがたびたび返ってきます。酪農家は、自走式のハーベスタで牧草を切り刻みながら収穫し、4~5カ月かけて発酵させ、牧草サイレージの粗飼料を作ります。
バラエティ溢れる飼料の世界
「粗飼料」とは基本となる飼料のこと。牛さんの主食です。
原料は「牧草」や「飼料イネ」「稲の茎」等で、調理法(作り方)は、「生」か「発酵させる」か「乾燥させる」の3つが定番です。
人も野菜を生で食べますし、長期保存をしたい場合はお漬物にしたり乾物にしたりしますよね? それと同じことです。
「生」の粗飼料とは青草のこと
「生」の粗飼料とは青草のことです。新鮮なので水分や栄養価も高く、牛さんたちも大好きです。
しかし生なので刈り取った後は保存が難しいため、もっぱら夏季の放牧時に食べている粗飼料です。
牧草を「発酵させる」と、お漬物のような粗飼料になります。牧草に限らず、植物や穀物を発酵させて作る飼料はサイレージと呼ばれていて、乳酸菌の匂いが牛さんたちの食欲をおう盛にします。私たち日本人が食べるお漬物はおかずですが、牛さんにとっては主食なのです。
「乾燥させる」粗飼料は、主に「乾草」
「乾燥させる」粗飼料は、牧草を乾燥させて作る「乾草」が主ですが、イネ科植物の茎を乾燥させた「稲わら」もあります。乾草はビタミンやミネラルが凝縮されているうえ、満腹感が得られる大事な主食なのですが、刈り取りから乾燥まで晴天が続かないと質の良い乾草にならないなど、とりわけ製造が難しい粗飼料です。
それぞれ味や風味、栄養の特徴もさまざまですから、牧場主はなるべく複数の粗飼料を用意して、1日2回程度の食事タイムに給餌しています。牛さんたちが食べ飽きしないようメニューを変えながら、基本の食事をたっぷりとらせることは、牧場主やスタッフの大切な仕事です。
野菜を食べて、たんぱく質をつくってくれる牛
人間も、主食であるお米を十分に食べている人はパワーにあふれていますよね。それは牛さんも同じことで、良い粗飼料は元気と良い乳のもとです。牧草由来の粗飼料は繊維が豊富で消化が遅いため、反すう胃を持つ牛はゆっくりとそしゃくしながら食べて胃袋を丈夫にします。こうして牛の体内で消化された食物繊維はたんぱく質に変換され、乳の成分となります。牧草を食べて乳にする牛さんってすごい!